姫路中島・妙諦寺の完全修復



 姫路中島の妙諦寺の建立以来の本堂大改修に伴い、平成15年(2003年)秋から翌16年6月にかけて漆塗り部分の完全修復をしました。

 気温の低い季節の現場作業で、漆の乾きもスムーズには進まず、半年以上費やしました。その修理の様子をご紹介します。





 各パートに分けてご紹介します。
 まずは須弥壇(しゅみだん)の修理からです。

 作業前です。黒も朱も艶はなくなり欠けている部分も多く見られました。また寄木のつくりのため各段ごとに隙間がのぞいてしまっていました。

 隅や面もとても傷んでいます。

 金物も完全に変色していました。
     


←下地から剥がれ木地が出ているような状態。



 
 
  大きなくぼみや割れには木を埋めたり、刻苧{こくそ}(引き粉:木くずと生漆を混ぜたもの)を詰め、おおまかにならします。

 
 その後、堅地(生漆と砥の粉を混ぜたもの)をつけ、研いで平滑にします。
 
 全体にわたって丸くなっていた角は堅地を盛り上げ整形します。線がすっきり出てきました。









 ←須弥壇内側。




 くぼみやうねりが無くなってきました。
   
 一旦黒漆で下塗りします。

 黒漆から下塗りしていきます。下塗り後、さらにこまかいくぼみ等を堅地で修正します。

 朱の下塗り・修正、黒・朱中塗りを経て上塗り完了です。
 屋台や仏壇で使用するものと同じ国産研ぎ出し漆を塗りました。 写真は炭研ぎ前の状態です。

 上塗り後、炭研ぎ、蝋色(ろいろ)研ぎ、胴摺り(どうずり)、等の工程へと続きます。

 さらに、漆を摺り込み手で磨く蝋色(ろいろ)を三回繰り返します。蝋色は角粉(つのこ)でおこないます。

 蝋色完了後、金箔を押していきます。
やはり一号色の金箔を使用。



 金物はすべて金メッキをしました。






 須弥壇完成です
欄干も蝋色仕上げとしました。





 つづいて柱です。

 人の通る高さの箔は剥げていました。また下地からめくれてしまっているところも多く見られました。

 柱自体が傷んでしまっているものは大工さんにより新しい木をつがれました。つぎ面の割れ防止と、節が正面からも見えるため布を着せます。

 古い塗り面のもろい部分は剥がします。剥がしだすとどんどん広がり見極めが必要です。
この作業はさすがに電動工具が活躍しました。

 刻苧でくぼみを埋め、堅地研ぎ終了。このあと布着せです。

 入り組んだ須弥壇にあわせ切り出します。


 糊と生漆を混ぜたもので貼っていきます

 布着せ完了。

 最近では地研ぎを電動工具で行う業者さんがほとんどのようですが、当店は近道をせず砥石で完全手作業です。
 納得のいく平滑な面出しが可能です。

 堅地研ぎ終了。



 下塗り、くぼみ修正、上塗り、炭研ぎのあと漆摺り上げとしました。ぼんやりとした上品な半艶仕上げです。

 塗り作業の写真がないのでいきなり最終の箔押しの様子。
四寸二分角の一号金箔を使用しました。






 

 写真が多くなるので内陣・天井は別項にわけます。

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