彫刻の修復(西之町狭間彫刻、亀山狭間様彫刻) 10/1/21up   <TOPにもどる

 祭り屋台といえば時に激しい練りが付き物、ずっと完成当初のまま保たれることは難しく、折に触れ繕いが必要になってきます。この項ではその彫刻の修理についてご紹介いたします。





 まずは生矢神社亀山屋台の彫刻です。

修理をさせていただくことになった最初のきっかけはこの部分の脱落とお聞きしました。

三代目松本義廣師の製作の狭間(さま)彫刻です。



 


 お話を伺う中で、以前の修理の少し見栄えが良くない所もあって気になっていらっしゃるとのことでした。(上の二枚)

その部分も一旦完全に分解して再構築することにしました。(左)





 
 手にしているのが一旦外した枝のかたまり。 付け口をカット&トライで合わせながら複数の付け口の接着面が同時に当たるように調整します。

 圧着するためにあてものを工夫しながら養生します。(右画像)




 
 彫りそのものが無くなっている箇所もありました。 赤の点線で囲った部分が破断面で緑丸のところに松の葉があったはずです。

 右画像の青丸のように枝の先の細い部分の欠落も、接木(つぎき)ののち本来の流れを想像し再現していきます。



 色の違いでわかりやすいので現在修理中の淡路の檀尻の彫刻も見て頂きましょう。

 手前の部分、継ぎ足しているのがお分かりでしょうか。


 


 各部拡大です。

ひとつひとつは小さい範囲ながら、切断面を整えてから接木をしなければいけないことも含めて、なかなか手間の要る作業です。






とはいえ「無かったら」そこが目立つものです。

この龍の顔の下部のギザギザなど5ミリほどのことですが直さないわけにはいけません。






 そんな作業を繰り返して修理完成した亀山狭間彫刻。
青いテープで修理部分を示してみました。20箇所以上ありました。

前述の緑丸部分ももちろん再現しています。 どこかお分かりでしょうか。


 今後他の三面も作業に掛からせて頂きます。



 こちらは大塩西之町狭間彫刻、上のような白木の修復ではなく漆塗箔彩色(うるしぬりはくさいしき)の修復です。

 作業途中の様子です。 前の彩色を落としていっているところ。


 
 「欠け」はやはり直します。 松の葉など繊細な表現の部分は旧い塗り・下地を全て彫り直しました。



 数工程挟み、漆を塗り重ねていきます。 天然漆の刷毛(はけ)塗りです。



 漆の乾き(固まり)加減を見ながら箔押し作業に入ります。金箔・プラチナ箔、ともに純度の高い一号色での施工です。

 当店では箔の定着にも天然漆を使用しております。



 最終、彩色も終え作業完了。 上の修理途中の画像の面です。




こちらは箔押し完了時の一枚、ムロの中です。 よくツヤが上がっています。 


 前回は金彩色(きんざいしき)といって金箔を活かす彩色方法だったこともあり、人物が背景と曖昧になっている感じがありましたが、このたびの修復では通例の彩色としたためかなりはっきりした印象となりました。





 


 彩色が最終工程、とはどういうことかといいますと、枝付けが無いということ。 つまり丸彫りです。




 木の塊から全て彫り出してこうなっているとおもうと感嘆します。作業で間近で見させていただくので、「凄いことやな・・」と殊更感じます。現役の狭間彫刻では唯一だと思われます。

 初代松本義廣師の作だと聞いております。



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