生矢神社・飯田屋台漆塗箔その1





 さる七月二十一日、飯田屋台の漆塗りが完成しお納めしました。
その作業模様と完成の様子をご紹介します。

 上内工務店の製作で柱芯三尺の棟です。
彫刻は中山龍雲氏、金具は竹内さんです。







平成18年11月3日、快晴のもと白木の屋台をお預かりしました。



下地工程・塗り工程



 井筒・桝組みをばらし、単体になった棟。
下地作業に入る前に野地板の継ぎ目や釘の処理を施します。
 下地の下地です。



 さらにこの作業の前に屋台内側の各所補強や重要部分の下準備をしております。
それらは経験に基づくところですが、屋台ごとに新しい発見があり、それゆえまだこれで完壁、とはいえず日々研究を重ねています。

 [布着せ]、下地作業で重要な工程です。

先代、わたしにとって祖父が、
「家建てることでゆうたら棟上にあたるんや」
と昔よく言っていました。

 当時はその意味するところがぼんやりとしか分かりませんでしたが、13年目の秋を迎えてもっともな言葉だなぁ、といま感じています。

 当店では天然漆による下地を使用しております。

 漆塗りは体の構造になぞらえて考えていただけるとイメージしやすいかとおもいます。
お預かりした木地は「骨格」で、下地が「肉」、
いわゆる[塗り]は工程としては実は最終段階で、
「皮膚」にあたります。

下地というと木地を整える目的であるとか目を止めるためにすると思われているのが一般的ですが、その範囲の下地だけですと屋台の漆塗りはできません。白木の屋台は優美な姿をみせていますが、いざ漆塗りをするとなると想像以上に凹凸があったり、入り組んだりしているものです。

木地という骨格に棟梁の思い描いた曲線を見極め、下地を重ねることによってできるだけ自然な面を再現する、、
いうなれば下地は「形」を作る作業です。野地板の継ぎ目付近はは厚さ1cmに及ぶこともあります。

 全工程(60工程以上)の実に8割ほどがこの「形」を作るまでの作業だといっても言い過ぎではありません。

 漆による下地、[堅地(かたじ)]は屋根鏡だけではありません。完成後、金物で隠れてしまう水切り・裏甲ももちろん同じです。

 この画像では野地板の厚さと下地の厚さが見ていただけるとおもいます。まだ下地は完了していません。

 おなじく下地段階の昇り総才。

 堅地の特長は諸々ありますが、形の作りやすさもそのひとつです。
角や隅を井然とつくることができます。

 下地工程が終わると、[研ぎ]に入ります。

 研ぎあがった状態です。

 これでひとまず下地工程は完了です。

 塗り工程に入りました。
この後もこまかな修正を重ねます。

 画像は下塗り完了時です。

 炭研ぎの工程です。
文字通り、油桐の木炭で漆の塗り面を研いでいきます。

 灰色に見えるのが研ぎ終えた部分です。


 昇り総才を見るとまだ景色が映りこんでいないのがわかります。

 中塗り研ぎ。

 左の面にぼんやり映っているのは北脇屋台です。

 上塗りの炭研ぎです。
このあと蝋色(ろいろ)という磨き作業に入ることから蝋色研ぎと呼んでいます。

 この工程で研ぎ終えた面が、最終の面になります。
刷毛(はけ)目を研いでいきます。

 

蝋色完了

 総蝋色仕上げとなっています。


 漆を摺りこんでは手で磨き上げる、という作業を繰り返します。

 純国産研出黒漆を使用しています。


垂木まわり


 垂木・茅負・木負・丸桁も[堅地]を付けていきます。

 こんな画像しかありませんが、
箆(へら)で一本一本、一筋一筋付けていきます。

 下地をつけおえると、砥石で研いでいきます。

 スプレーの吹き付けによる下地のように角や隅が丸くなりません。


 

完成した垂木まわり

 



幣額(鏡)


 幣額も全工程、漆による仕上げです。

 棟と同じ国産黒漆を塗り蝋色仕上げで、金箔の部分は黄色い漆を塗り分けています。剥げたときに目立ちにくくなります。





←金箔を押し終えたところ。定着したあと余分な金箔を拭き取ります。




 取り付けた状態。(全体写真の部分拡大)











   その2ではその他の作業と納入時の様子をご紹介します。



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